
長野県にある薬草店の四季を綴った本です。
この本を手にしたのは2016年の初めの頃で、
農業を生業として暮らしていくことに、不安を覚えていたときでした。
嵐や日照りにも見舞われるし、
優しい風や光に抱かれることもあるでしょう。
種が緑になるまでの、花が実になるまでの、
ほんのひとときを暖かく包むことが、
私と私の薬草店ができるささやかなことです。
本の中のこの一文に惹かれて、著者の営む
「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」
を訪ねました。
静かな森の中にひっそり佇む薬草店は、
木こりの住処のような質素な山小屋でした。
近づいていくと驚くことに、
お店全体がハーブの香りに包まれています。
その香りは、周りに植えられている数百種類のハーブと、
お店で取り扱っている薬草の匂いが積み重ねられてできたように思えて、
この匂いは買って帰ることはできないのだ。
と思った記憶があります。
お店の中は薄暗く、乾燥ハーブの入った大きなガラス瓶が、
窓から差し込む少しの光を反射して、小さな商品達を照らしていました。
手に取る品物はどれも魔女の知恵が形になったもののように思えて、
ありがたや ありがたや。という気持ちで薬草茶を購入。
どのような形をとっていても、本気で取り組んだ人の作ったモノは
人を感動させることができる。ということを理解することができました。
この薬草店での経験が、後に
「食べると楽しく元気になるブドウを作りたい」
という気持ちが沸いてくるきっかけとなりました。